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必読!タックス・リターン徹底ガイド2019

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必読!タックス・リターン徹底ガイド2019

オーストラリアの会計年度は7月1日から翌年の6月30日までです。7月を迎え、会計年度が変わるとタックス・リターンの申告がスタートします。本特集では、2018/19(2019年度)のタックス・リターンの内容に加え、オーストラリア国税局(ATO)の動向についても解説していきます。

取材協力・文=甘利会計事務所/甘利知子さん(登録税理士・公認会計士)

タックス・リターンとは

タックス・リターンとは、日本での年末調整や確定申告に当たり、オーストラリアでは収入のある人はほとんどの場合タックス・リターンをしなければなりません。以下に主な要件を挙げるので、1つでも当てはまる場合にはタックス・リターンの義務が生じます。義務のない人は「Non-Lodgement advise」を提出する必要があります。

  • 居住者で収入から(金額にかかわらず)源泉徴収されているものがあった
  • インストールメントという税金の前払いをしていた
  • 年間の収入が1万8,200ドルを超えた(年金受給者の場合は別額)
  • 18歳未満で、416ドル以上の不労働収入があった(親が子ども名義で保有する投資)
  • 年度の途中でオーストラリアの居住者になった、または居住者でなくなった
  • 事業を行っている
  • 株、投資ファンドを持っている
  • 非居住者で1ドル以上の収入があった

ワーキング・ホリデー(以下、ワーホリ)で年間収入が雇用収入のみで3万7,000ドル以内かつ15%の源泉徴収がされている人はタックス・リターン及びNon lodgement adviseを提出する必要はありません。

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タックス・リターンの準備

まず、タックス・リターンの申告のために準備するものは主に以下の通りです。

  • 還付金を受け取るための銀行口座の情報(BSB、口座番号、口座名義)
  • PAYG ペイメント・サマリー( 別称Group Certificate)またはIncome statement*1
  • 会計年度内に受け取った銀行の利息*2総額―1ドルから申告が必要
  • 株の配当金の支払い証明書、投資ファンドからの記録、不動産投資やビジネスの収入内訳など
  • 永住者の場合、民間医療保険*3に入っていればそのステートメント
  • 必要経費の証拠(レシートなど)
  • 配偶者の収入
  • パスポートとビザの証明―メディケア*4保険料免除の場合
  • 個人事業主は、収入と経費の詳細とまとめ
  • 海外からの収入
  • 投資関係のステートメント
  • その他の収入
  • スーパーアニュエーションに自分で追加入金し、税金控除に使う場合、ファンドに「税控除に使うという通知」(Notice of intent to claim a tax deduction for super contribution)を送り、それに対する受領通知(詳しくは後に記載しております永住者にとってのスーパーを参考ください)

*1 PAYGペイメント・サマリー】
 PAYGペイメント・サマリーとは、雇用されている場合の収入の証明書です。会計年度のうち働いていた期間、または1年分として雇用主から7月14日までに発行されます。今年度のタックスリターンから大きく変わることとして、ペイメント・サマリーが発行されない場合があります。これは雇用主が給料を払うたびにATOに報告するという制度によるもので、この場合は自分で「myGov」にはいり、Income statementで確認するか、税理士に確認することができます。今年度はペイメント・サマリーがもらえる会社とそうでない会社が混在します。自分がどちらに当てはまるか分からない場合は雇用主に確認してください。 この新しい制度を始めた会社は7月31日までに給料のまとめを出すことになっています。それまではIncome statementに最終的な数値が出ない場合があります。今年のタックス・リターンは急がず8月中旬を目処にしましょう。 また、myGovの登録は下記のリンクからできます。
▼Web: www.my.gov.au/LoginServices/main/login?execution=e2s1

*2 銀行利息】
 銀行利息(1ドル以上)も収入となります。銀行口座の開設時に出し入れする口座に加えて、利息の付く口座を開設しそこにお金が少しでも入っていれば利息を受け取っていると思ってください。1年間の受取利息はオンラインで合計金額が見れますが、分からない場合は銀行に問い合わせてください。また、銀行にタックス・ファイル・ナンバーを届け出ていないと、1回の受取利息が10ドル以上の場合には、税金が源泉徴収(Withholding Tax)されているかもしれません。その税金はタックス・リターンの時に払い戻せますので、銀行の記録にTaxという文字があったら年間(7月~6月)で幾ら引かれているか調べましょう。銀行利息のデータはATOのポータル・サイトからも確認できますが、ポータル・サイトのデータは抜けていることもありますので、ご自身で確認してください。

*3 民間医療保険】
 民間医療保険は、永住権保持者のみ対象です。収入によって政府からのリベート額の調整が入る場合があります。年収が一定を超えている場合、同保険のホスピタル・カバーに入っていないとサーチャージが掛けられます。サーチャージの対象になるのは、収入が個人で9万ドル、カップルで18万ドルを超える場合です。

*4 メディケア保険】
 メディケア保険とは国民健康保険のことです。課税収入の2%が保険料として計算されます。テンポラリー・ビザでメディケアの資格がない場合は保険料を免除してもらうことができます。このためには所得税申告前にメディケア・オフィスにメディケア保険料免除証明書を発行してもらう必要があります。19年度のメディケア保険料計算は、課税所得が未婚者は2万2,398ドル、既婚者の場合は夫婦合計3万7,794ドルからですので、それ未満の課税所得の場合は保険料は掛かりません。

経費のリスト・アップ

経費は、一般的に仕事をするに当たっての必要経費と、その他経費扱いが認められている出費を指します。業務によって、また個人によっても変わりますので、一概には言えませんが、以下がその例です。

◆仕事関係

  • 個人の車を通勤以外の業務に使った場合・仕事で発生した交通費(通勤は不可)
  • ユニフォーム、安全靴(スーツ、一般のビジネス・ウェア、単なる色指定の服などは不可)
  • 仕事をしている上で必要になった教育費(仕事に就くための教育費は不可)
  • 仕事関係の業界紙、参考文献
  • 個人の携帯電話を仕事に使う必要があった場合、仕事分の使用料金
  • PCやタブレットなどの仕事上の使用料金
  • ユニオンの会費、登録費
  • 道具類、メンテナンス費
  • 屋外の業務に必要な日焼け止め、帽子、サングラスなど

◆その他、計上できる出費

  • チャリティー(ATOから税金控除を認められている団体)への募金(2ドル以上、レシートが必要)
  • 学校設立基金(School Building Fund)の寄付
  • 年度中に支払った税理士費用(税理士に面会した際の交通費も可)

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申告方法と申告期限

申告方法

申告方法としては、以下の方法があります。

  • 登録税理士(Tax Agent)に依頼
  • 「myTax」で自分でオンライン申告

登録税理士に頼むと料金が発生しますが、正しいアドバイスを受けることにより還付金が多くなるだけでなく、時間の節約にもなります。また、その料金は翌年のタックス・リターンの際に経費として計上できる上、税務署との間にワン・クッション置くことによって、後日税務署とやり取りが必要になった場合に安心です。myTaxという政府のオンライン・システムは、多くの人が使用するようになってきました。タックス・リターンが必要のない場合のNon Lodgement Adviceも、myTaxから受け取ることができます。myTaxからの申告は、税務署から直接連絡が来ても対処ができる人には良いでしょう。

所得税申告期限

自分で申告する場合は10月31日までになります。登録税理士から申告する場合は大抵翌年の5月15日まで延長できますが、過去の申告が滞っている場合、延長はできません。

申告期限を過ぎてしまったら?

申告の義務のある期間内に申告できていないものは、もう出せないのではなく、一刻も早く出す必要があります。このような場合は自分で出さずに登録税理士に依頼しましょう。知らないうちに罰金が科せられていることもありますのでご注意を。「過去一度も申告をしていないので、10年間分お願いします」という依頼を受けることもあります。遅くても出すことが大切です。

タックス・リターンの申告をすると

通常1~2週間ほどで「Notice of Assessment」という結果通知が郵送、または政府のオンライン・サイト、「myGov」に登録している人は、myGovのメール・ボックスに直接メールが来ます。結果通知に時間が掛かる場合もあり、ATOは4週間以内を通知期間と見なしています。還付金のある人には銀行に振り込みがあります。追加納税が必要な人の場合、Notice of Assessmentは請求書を兼ねています。

Notice of Assessmentは、本人証明の書類として使える大切なものです。申告時の住所から引っ越してしまって受け取れないことがないように気を付けましょう。タックス・ファイル・ナンバーを悪用する詐欺もありますので注意が必要です。申告が終わって入金された後も、PAYGペイメント・サマリーなど申告時に必要だった書類や、Notice of Assessmentは大切に保管しましょう。基本的には5年間の保管となっています。

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タックス・リターンのしくみ

リターンという言葉を「戻る」という意味で捉えがちですが、これは戻るという意味ではなく、「申告をする」という意味です。 では、税金の計算はどう行うのでしょうか。まず、会計年度中の課税対象となる収入(一部の例外もありますが雇用収入や、個人・パートナーシップ事業収入、銀行口座に付いた利子、株の配当、投資収入、その他の収入など)を全て合計します(総収入)。そこから計上できる経費を引いたものが課税所得になります。

総収入-経費=課税所得(Taxable Income)

課税所得から割り出した税額が、既に源泉徴収などで納めている税金の額より少なければ差額を戻してもらうことになります。一方、既に払っている金額よりも割り出した税額が高くなると、請求書が来て足りない分を納税することになります。

課税所得から割り出した税金 源泉徴収された税金 差額戻り(Refund)
課税所得から割り出した税金 源泉徴収された税金 差額支払い

居住者か非居住者か

税務上の居住者、非居住者というのがあります。通常はオーストラリアの市民、永住者、6カ月以上のビジネス・ビザ及び学生ビザは居住者、それ以外は非居住者ですが、必ずしもそうではありません。例えばオーストラリア国外に数年の契約予定で働きに行っても、オーストラリアに家があり家族もいる場合、居住者となることもありますし、オーストラリアに1年以上居ても、家が海外にある場合は非居住者となることもあります。

居住者は、永住者と一時的居住者に分けられ、永住者はオーストラリアのみならず、全世界の収入を申告する必要があります。一時居住者はオーストラリアで発生している収入及び就業収入の申告、非居住者はオーストラリアの収入のみの申告になります。

  • 居住者

    ①永住者→全世界の収入を申告
    ②一時的居住者→オーストラリアの収入及び就業収入(海外向けサービス収入を含む)の申告

  • 非居住者→オーストラリアの収入のみ申告

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タックス・リターンの計算

●居住者のタックス・レート(12カ月居住者の場合)

課税所得(A) 税率 税計算
$1~$18,200 0% $0(無税枠)
$18,201~$37,000 19% (A-$18,200)×0.19
$37,001~$90,000 32.5% (A-$37,000)×0.325+$3,572
$90,001~$180,000 37% (A-$90,000)×0.37+$20,797
$180,001~ 45% (A-$180,000)×0.45+$54,097

※上記には低所得者控除やメディケア・レビーは入っていません

低所得者控除を計算に入れると、会計年度中12カ月居住者の場合、1万8,200ドルより下限が上がって2万1,595ドルまでは税金はゼロになります(今ここで12カ月としたのは、年度途中で居住者扱いが変わっている場合は0%枠の1万8,200ドルが調整されるためです)。

さて、自分は税金が戻って来るのだろうかという点ですが、上記の計算式で自分の税金を割り出します。また、メディケアの資格がある人は2%のレビーを加えて計算してください。

タックス・レートはスライド式になっていますので、タックス・レートが一段上がっても急に税金が多くなることはありません。

計算例1

以下に、永住者で3万ドルと10万ドルの課税所得の場合の計算をしてみます。

●3万ドルの課税収入の場合
($30,000-$18,200)×0.19=$2,242+$600(メディケア2%分)=$2,842
(実際は低所得者控除が入りますので、若干少なくなります)

●10万ドルの課税収入の場合
($100,000-$90,000)×0.37+$20,797=$24,497+$2,000(メディケア2%分)=$26,497

また、上記の計算をしてくれる以下のウェブサイトもあるのでご活用ください(ただし、居住者のタックス計算に限ります。非居住者のタックス計算は下記の項目をご覧ください)。
Web: www.moneysmart.gov.au/tools-and-resources/calculators-and-apps/income-tax-calculator

従来、低所得者控除として最大445ドルまでの控除計算がありました。それに加えて2019年度より低中所得者控除(LAMITO)というものが導入されました。18年度と収入が同じ場合、支払うべき税金は少なくなります。詳しい計算はここでは省きますが、例えば18年度と19年度の課税所得が5万ドルだった場合、19年度の支払うべきタックスは530ドル少なくなります。
※ここで530ドルとしていますが、この金額を上げるという提案が出されています。この記事を書いている時点ではまだ法案が通っていませんが、通ればこの5万ドルの例でいうと支払うべきタックスは1,080ドル少なくなります。

●非居住者のタックス・レート

課税所得(A) 税率 税計算
$1~$90,000 32.5% (A)×0.325
$90,001~$180,000 37% (A-$90,000)×0.37+$29,250
$180,001~ 45% (A-$180,000)×0.45+$62,550

※非居住者は低所得者控除及び低中所得者控除はありません。

計算例2

居住者の計算例で計算した金額を、非居住者の場合に当てはめて計算してみます。

●3万ドルの課税収入の場合
$30,000×0.325=$9,750

●10万ドルの課税収入の場合
($100,000-$90,000)×0.37+$29,250=$32,950

計算例1、2の結果を比較してみると、3万ドルの課税所得の場合は非居住者の税金が9,750ドル、居住者は2,842ドルです。また、10万ドルで計算すると非居住者の税金は3万2,950ドル、居住者は2万6,497ドルとなります。

低い所得の場合は、収入に対する割合としての違いが大きくなりますので、差は大きく感じられます(低所得控除は計算外)。ここで割り出した税金+メディケア・レビーの合計と、既に源泉徴収などで納めてある額を比べてみましょう。源泉徴収額が合計より多ければ差額が戻ってくることになり、少なければその分を支払うことになります。

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ワーホリのタックス・リターンの計算

ワーホリのタックス・レート

課税所得(A) 税率税計算 税計算
$1~$37,000 15% (A)×0.15
$37,001~$90,000 32.5% (A-$37,000)×0.325+$5,550
$90,001~$180,000 37% (A-$90,000)×0.37+$22,775
$180,001~ 45% (A-$180,000)×0.45+$56,075

ワーホリのタックス計算

雇用主が15%の源泉徴収をしている場合、収入が他になければタックス・リターンをしてもプラス・マイナス・ゼロなので、ATOはタックス・リターンをする必要はないという方針にしました。ただし、15%以外の源泉徴収がされている場合、もしくは3万7,000ドル以上の収入の場合はタックス・リターンをする必要があります。

ワーホリは基本的には非居住者ですが、年度の途中でビザを6カ月以上の学生ビザやビジネス・ビザ、永住ビザなどに変更すると、そこから居住者になります。会計年度内でビザが変わって居住・非居住のステータスが変わった場合、それぞれのステータス期間の長さ及び幾らずつの収入があったかによってタックス・リターンの結果が変わってきます。会計年度途中でステータスが変わったタックス・リターンについて、税務署が間違った計算をして結果通知を出し、訂正依頼を何度もするというケースもありますので注意が必要です。

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スーパーアニュエーション

スーパーアニュエーション(以下、スーパー)は個人の積立年金です。1カ月の給料として450ドル以上の収入がある場合は、雇用主が給料の9.5%をスーパーファンド(以下、ファンド)に払い込むことになっており、従業員のビザの種類は関係がありません(一部例外ビザあり)。ファンドでは預かっている資金を運用して増やしていきますが、経済状況により、減る場合もあります。

ファンドの口座は自分のものです。銀行口座と同じように自分で管理する必要があります。まだファンドを持っていない場合、雇用主がファンド口座を開設してくれるのが一般的です。自分で開設して雇用主に振込先を指定することもできます。雇用主が開設してくれた場合は、ファンドから手紙が来ますので、ファンド名とメンバー・ナンバーを確認してください。自分のメンバーについて確認できたら、転職しても、新しい雇用主に自分のファンドを指定してそこに振り込んでもらうことができます。ファンドはそれぞれ管理料を取りますので、常に1つのファンドにまとめておいた方が賢明です(ワーホリは下記参照)。

ファンドは、銀行口座と同じように、ネットで自分のファンド口座にアクセスできます。自分のファンドの内容を知ることは銀行口座の内容を知ることと同じように大切です。住所変更や残高の確認や、口座に付随している保険を変更したりできますので、ログインの手続きをしましょう。

一時滞在者のスーパー

スーパーは年金の積み立てなので、通常は年齢が60歳になるか、他の特別条件が適応しない限り引き出せませんが、一時滞在ビザの場合、出国してビザが切れると引き出す資格を得れます。引き出す際の税率は通常35%ですが、ワーホリの場合65%が引かれます。ワーホリの高税率は、17年度にワーホリの所得税変更と共に始まりました。

最初はワーホリで、その後学生ビザやビジネス・ビザに変更した場合を考えてみます。ATOの説明では、同じファンドを使ってワーホリ収入分のスーパーが入金されていた場合は、ワーホリと他のビザの区切りをファンド内で付けられないので、全額に対して65%の税金を課します。ワーホリの時にスーパーを開設した場合、その後他のビザになった時に別のスーパーの口座を開いて口座を分けておくと、ワーホリ分のみ65%となり、他ビザの分は35%の税率となります。

永住者にとってのスーパー

スーパーは老後を支えるために大切なのはもちろんですが、税金面で優遇があるので、それをうまく利用することで永住者にとっては節税にもなります。17年7月1日より、雇用・自営にかかわらずスーパーに追加入金して税控除ができるようになりました。

スーパーの税金は15%ですので、自分のタックス・レートとの差額分が節税されます。ただし、1年に税控除の対象にできるのは2万5,000ドルまでで、これは雇用主からの9.5%の額も含めて計算します。

税金控除に使う場合、ファンドに「税控除に使うという通知」(Notice of intent to claim a tax deduction for super contribution)を送り、それに対する受領通知が必要です。同通知は会計年度を締めた後、翌年の6月30日までに出すことができますので、19年度にスーパーに追加入金して税控除を受けたい場合は、タックス・リターン前に受領通知を受け取ってください。

また、低所得者や、その配偶者がいる場合は、政府から「Co-contribution」というスーパーの追加補助をもらえたり、配偶者のスーパーに入金することで税控除を受けられます。スーパーにはルールがいろいろある上よく変わるので、専門家に相談の上判断してください。

スーパー口座の残高が6,000ドル以下で16カ月入金がないものはATOの管轄に移されます。ATOの管轄になったからといって取り上げられるわけではなく、再度スーパーを入金する場合は自分のスーパーに戻すことができます。

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ATOの傾向

今年ターゲットとされているのは、個人の過剰申告経費、「Airbnb」などのシェアリング・エコノミー、キャッシュビジネス、仮想通貨などです。

テクノロジーが発達し、データ・マッチングによりイレギュラーなものはPCがすぐに見つけますので、今まで調査が届かなかったところまで追跡が及ぶのは間違いありません。また雇用主がATOにレポートを出さなければならない内容も年々増えています(Single touch payroll、一部業種のコントラクターへの支払いのレポートなど)。これにより、ATOは未払い・未申告などの発見がよりしやすくなっています。

ATOのデータ・マッチングによる調査

以下は、他の行政や私企業からのデータと照合できる情報です。

  • 給与と源泉徴収
  • 銀行―利息収入、海外送金
  • 政府の社会保険受給者のデータ
  • 移民局
  • 不動産売買の記録―印紙税、賃貸の際のレンタル・ボンドの記録
  • Airbnb、eBay、Uber、他の売上
  • 高級品に掛ける保険金から、所得の調査
  • クレジット・カード会社や、PayPalなどの記録
  • コントラクターの収入

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2019年監査ターゲット<個人>

経費の過剰申告

ターゲットとなっているのは、レシート以外の証明をもとに計上する経費です。レシート以外の証明を基に計上する経費には、キロ数ベースの車の経費、出張費、残業食事代、ユニフォームの洗濯代、レシートなしの小額経費などが上げられます。計上するものは、実際に出費があったものに限ります。証拠が要らない範囲内300ドルの計上でも出費の事実と根拠が必要です。出費の証拠としてはレシートが必要ですが、レシートがなくても計上できるものや、レシート入手が無理なものに関しては、銀行のStatementから証明するか、ダイアリーに記帳しておく必要があります。またプライベートと兼ねているものは仕事分のみ計上しますが、その際には計算の根拠を求められます。

Airbnb、eBay、Uberなどのシェアリング・エコノミーの収入

ATOはシェアリング・エコノミーのデータ・マッチング・プログラムに力をいれています。そのため、シェアリング・エコノミーの供給先や銀行などの行政機関からデータを集めることができます。この内容には、所有者の名前、連絡先、貸し家の住所、家賃、宿泊日数、支払日など様々です。これにより、ATOは集めたデータと申告されているデータを照らし合わせることができるので、収入の申告漏れや経費の過剰申告などが見つけやすくなっています。

キャピタル・ゲインの申告

キャピタル・ゲイン税は持ち株、投資物件などを売って価値が上がったことにより利益が出たものに対する課税ですが、これもタックス・リターン内で申告しますので、忘れないようにしてください。

自分の居住する住居、自家用車などは対象外となりますが、自宅の一部をビジネス用などとして収入を得るために使った場合、部分的にキャピタル・ゲインの対象にな特集る場合があります。これが今年のターゲットとなっています。キャピタル・ゲインの税収は大きいので、ATOは申告漏れの調査に力を入れています。

海外送金

海外送金1万ドル以上については、銀行がATOにレポートしますが、それ以下でも頻繁に送金があるとレーダーに掛かります。元々自分のお金や、家族から借りたりもらったりしたものは、収入ではないので税金は掛からないのですが、その証拠提出を要求されることがあります。

収入としては、海外の顧客宛てに物品またはサービス提供、日本の年金*などは海外収入ですので、申告漏れのないようにしましょう。日本の顧客とのオンライン仲介サイトで買い物代行や、情報を提供しているなど、半分趣味でしていることも、ビジネスとして見なされる場合は記録を取って、申告してください。

*日本の年金は、労働者と国が積み立てるので労働者が積み立てた分は、年金収入に対する控除として扱います。控除額は積立額と年齢から計算します

ライフスタイル

申告では収入が低いのに不動産や車などを購入したり、ぜいたくなライフスタイルをサポートする根拠がなかったりすると、ATOは収入が正しく申告されていないと判断し、調査する場合があります。ぜいたくではなくとも収入700ドル/週でレント600ドル/週などの不釣合いなライフスタイルがある場合は調査の対象となります。

監査が入ったら

監査は、申告が止まって結果を出す前に入る場合と、既に結果の出ている過去のものについて入る場合があります。

監査対象についての証拠の提示と説明を求められます。証拠がない場合は却下、説明もそれが収入につながる費用ではない、つまり私用と見なされた場合は却下されます。

まず、記録を取っておくことが大切です。レシートなどはコピーしてデータ保管で構いません。その他、ログ・ブックやトラベル・ダイアリーなども正しく付けましょう。

雇用収入の経費計上については、雇用主がその事実を認めていることが大切です。監査が入ると、ATOは雇用主に問い合わせて確認をします。雇用主には特に証拠は求められませんが、事実の有無と計上している数が妥当かどうかを確認されることがあります。

収入の申告漏れがあると判断された場合、ATOが勝手にあなたの収入から幾らの税金を払う必要があるという判断をします。上記のライフスタイルから割り出したり、ベンチマークから出したりします。

税法は無実を証明しないと有罪という厳しいものなので、ATOからは何の証拠を出す必要はなく、納税者がどう証明するかにかかっているわけです。また、監査の結果が出たから終わりということではありません。自分が正しいと信じて立証できる場合は、異議申し立てをします。監査の結果、追徴されることになった場合、払うべき税金の差額に加えてそれに対する利息、そしてペナルティーが科される場合があります。ペナルティーは申告の間違いが故意なのか、また悪質であるかどうかによって変わってきます。

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2019年監査ターゲット<中小企業・個人企業>

キャッシュ・ビジネス

昨年から引き続き一番のターゲットとなっています。現金売上が多い、または現金のみのビジネスは注意が必要です。ATOは、EFTPOS機の導入を勧めています。キャッシュ・ビジネスの場合、記帳を正しくすることはもちろん、現金の扱いについてもどう管理し、いつ銀行に入れるかなどルールを作っておくことをお勧めします。個人の財布とビジネスの口座が混同しないようにすることが大切です。キャッシュ・ビジネスは、監視されていると思って気を付けてください。

仮想通貨(Bitcoinなど)

Bitcoinなどの仮想通貨への投資の人気が急増していることもあり、ATOはこの分野もターゲットにしています。多くの場合は投資目的であるため、税法的にキャピタル・ゲインとなります。つまり買ったときと、売ったときの差額が課税されるものです。ここで気をつけなければならないのは、単純に売ったときだけでなく、他の仮想通貨に交換したときもその時の価値を計算し、申告する必要があります。また仮想通貨の目的がビジネスであるといった場合などは扱い方が変わってきます。いずれにせよ取引したときの記録をとっておくことが重要です。

ATOの訪問

ビジネスにATO職員が前触れなしに来ることがあります。まず、ATOの職員が自分のIDを提示し、出入金の記録方法や、雇用者の人数などを聞いてきます。ここで書類の提出を求められることはまずありませんし、職員が来たからといって問題があるわけではありませんが、その時に働いていないはずの人が居たり、ビジネスについて管理者が質問に答えられないと、後で調査のきっかけとなる場合があります。

コントラクターを雇う場合の報告

コントラクターに支払いをした場合の年間レポートを出すことが義務付けられている業種が増えてきています。2012/7/1から建築業界に始まり、2018/7/1からは清掃業界、クーリエ業界に広がりました。そして2019/7/1からはIT業界、配送関係、警備、監視関係に対してコントラクターに支払いをした場合はレポートを出さなくてはならなくなりました。これらの業種にあてはまり、コントラクターに支払いがあった場合は

  • コントラクターのABN
  • コントラクターの名前と住所
  • GSTを含む支払った金額

を報告しなければなりませんので、しっかり記録をつけておきましょう。

また、本来は雇用であるべきところをコントラクターとして契約して、労災やスーパーを払っていない場合、問題になる可能性が大きいです。正しい雇用体制にするようにしましょう。

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ATOを装う詐欺の電話

ここ数年ATOを装う詐欺の電話が急増しています。内容の多くは、税金の未払いがあるので、至急支払うようにというものです。また詐欺団体は電話番号の表示を自由に変えられる場合もあります。例えば電話の受け手がATOの番号を登録していたら、たとえ海外から掛けていても電話の表示にはATOとすることができるそうです。その他にも利用しているTax agentの電話番号をきいて、あたかもそのTax agentから掛けているように見せることも出来るそうです。

ATOは逮捕などといった脅しはしません。もし怪しい電話があったら、一度切り、会計士を利用している方は連絡を取りましょう。もしくはmyGovで自分に本当に未払いのものがあるか確認することができます。

※この記事はあくまでも一般的な情報提供が目的であり、アドバイスとして利用されるためのものではありません。



必見!マネー特集2021/【PR】H&H Lawyears

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 オーストラリアで起業や投資、資産運用を行う場合など、お金に関する疑問が生じた際、誰に相談すべきか迷うことがあるだろう。本特集では、税金問題や遺言相続問題など法務面でのサービスを取り扱う専門家に伺った、お金にまつわるさまざまな相談内容やサポート事例、注意点などをお届けする。

H&H Lawyers
林由紀夫氏

 シドニーCBDに弁護士28人が在籍する事務所を構え、日系の企業や個人に法的アドバイスを行うH&H Lawyers。オーストラリア初の日本人弁護士として長いキャリアを積み活躍する林由紀夫氏に、商業取引を始め雇用問題や相続問題、家族法など弁護士としての立場からお金に関する位置付けやサービスの強みについて話を伺った。

PROFILE

林由紀夫

林由紀夫
NSW大学法学部卒。1979年オーストラリアで弁護士資格を取得。80年フリーヒル・ホリングデール&ページ法律事務所(現ハーバート・スミス・フリーヒルズ)に入所し、84年からパートナー弁護士を務める。96年に自身の法律事務所「林由紀夫法律事務所」(現H&H Lawyers)を開設。オーストラリア及び日本の上場企業、政府機関から中小企業、個人まで幅広い顧客にさまざまなアドバイスを提供している。

ここがポイント

  • 商業取引全般、雇用問題、相続問題、家族法などお金にまつわるさまざまな案件に対応
  • 相談内容に応じ、その分野を専門とする弁護士が案件を担当し、M&Aなどにも迅速な対応が可能
  • 日本語によるきめ細やかな説明に加え、コストパフォーマンスの高いサービスを提供

──弁護士の職務を遂行する上で、お金は非常に重要なファクターだと推察しますがいかがでしょう。

 依頼者から評価されるためには、常に依頼者の利益(お金)を最優先に考え、結果を出すことが求められます。私はオーストラリアで弁護士になって今年で43年目です。その経験を踏まえて言えることは、刑事訴訟以外はビジネス法務を始め不動産売買から労働法、家族法、相続法にいたるまで、弁護士活動のほぼ全てにおいてお金が中心的な位置付けになります。

 例えばM&A(企業・事業の合併や買収)の場合、買い手の代理人としての職務は、法的側面から買収ターゲット会社の調査及びリスク分析を行い、クライアントが把握していない買収後の支出の発生を見抜くことが重要です。また支出の可能性があれば、価格の再交渉を含むしかるべき対応を契約書に反映させなければなりません。売り手側の代理人であれば、その逆になります。例えば想定外の訴訟が売却した会社に対して起こされてしまうなど、予期せぬ事態が発生するような場合、その責任・支出をいかに回避・減額するかという点を重視します。そのためには、豊富な経験と知識が欠かせません。

 お金の見地から言うと、ビジネス法務では特に税法の知識が重要です。依頼者が行おうとしている取り決めに関して、予想外の税務上の問題などがないかという検討や、無駄な税金の支払いを省くことが可能になるストラクチャーを初期段階で構築できれば、依頼者の出費を抑えることにつながるからです。

 リストラなど従業員の解雇に関する問題では、依頼者が雇用側であれば、いかに解雇に伴う支払いを少なくできるかを考え、依頼者が従業員であればできるだけ多くの支払いを受けられるよう交渉にあたります。離婚案件においては、依頼者のためにより有利な婚姻財産の分配の交渉に尽力します。また、相続案件については「娘婿に相続財産を渡したくない」など依頼者それぞれの意向に沿い、死後に相続人の間で争いが起きにくい遺言書・付属書類を作成します。そうすることで、将来的に相続に関する裁判などで遺産が消費されてしまうことを回避できるようにします。

──弁護士の法務費用は高額な印象がありますが、その点はいかがですか。

 法務費用が高いか安いかの判断は、弁護士のコスト・パフォーマンスによると思います。的確なアドバイスによってトラブルを回避でき、余分な支出を抑える、またはより多くの賠償金が得られれば、それに見合った弁護士費用は妥当だと考えます。当事務所で最近手掛けた日本企業のオーストラリア市場からの事業撤退に関する案件では、的確なアドバイス及びスキームの構築によってクライアントの撤退費用を数億円削減することができました。多くの弁護士が長い時間を費やしたため法務費用は数十万ドルになりましたが、費用対効果を考えれば決して高いものではありません。依頼者からは感謝されています。

 また、依頼者に安心感を与えるのも我々の重要な役割の1つだと思っています。一般的な居住用不動産の購入に関して、破格の安値で案件を引き受ける弁護士事務所もあります。しかし、そのような事務所に行ったクライアントの中には、「契約書に関する説明が全くなく、ただサインするよう言われ不安に思った」という理由から、当事務所に来た人も多くいます。当事務所はサービスの安売りはしませんが、全てにおいて日本語できめ細やかに説明し、質問に答え、依頼者が安心感をもって物件を購入できるよう努めています。不動産は高い買い物であるため、少しでも不安材料をなくし安心して物件を購入できるようにすることで、コストパフォーマンスの高い仕事をしていると自負しています。

 当事務所の今後の課題としては、「後進の育成」に尽きると考えています。一流の弁護士を育てることにより、クライアントからより信頼される事務所として皆様にこれまで以上の価値と安心感を提供し続けたいと思っています。

<事業内容>

企業から個人の相談まで幅広く法的アドバイスを提供。企業法務・商取引、不動産取引、個人向けの遺言書作成及び相続手続き、民事・刑事訴訟などの案件を取り扱う。迅速かつ的確な対応、依頼者の望む最善の結果達成、良心的な弁護士費用を設定していることで定評がある。

H&H Lawyers

H&H Lawyers

■住所:Level 5, 32 Martin Place, Sydney NSW
■Tel: (02)9233-1411
■Web: www.hhlaw.com.au/jpn

必見!マネー特集2021/【PR】CJM Lawyers

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 オーストラリアで起業や投資、資産運用を行う場合など、お金に関する疑問が生じた際、誰に相談すべきか迷うことがあるだろう。本特集では、税金問題や遺言相続問題など法務面でのサービスを取り扱う専門家に伺った、お金にまつわるさまざまな相談内容やサポート事例、注意点などをお届けする。

CJM Lawyers
Cronin James McLaughlin Lawyers
ジェイク・ジョン氏

 QLD州及びNSW州に3つのオフィスを構え、特定分野に特化した法律事務所として効率的かつ実用的な法的支援を行うCJM Lawyers。トリリンガルとして言語や文化の隔たりを越えクライアントをサポートするジェイク・ジョン氏に、同事務所のサービス内容やCOVID-19の影響、金銭問題のサポート事例などについて話を伺った。

PROFILE

ジェイク・ジョン

ジェイク・ジョン
ボンド大学法学部卒。NSW州最高裁判所及びオーストラリア高等裁判所に弁護士認定。一般民事事件、移民法、会社法、遺言・遺産相続など幅広い分野を取り扱う。英語・日本語・韓国語が堪能でP TEアカデミック試験90点(IELTS9.0相当)を取得。介護事業関係などコンサルティング会社の取締役経験4年。NSW州弁護士会、ゴールドコースト日本商工会議所、アジア・オーストラリア弁護士協会などに所属。

ここがポイント

  • お金に関する分野において個人、ビジネス・オーナー、ビジネス・パートナーに向け法的支援を実施
  • COVID-19によるパンデミックが引き起こした、個人の破産や企業の清算などの案件に対応
  • トリリンガルという特性を生かし、多種多様な案件に関わってきた弁護士がサポート

──お金に関わる法的支援において、どのようなサービスを提供していますか。

 お金に関する分野では、個人、ビジネス・オーナー、ビジネス・パートナーに向けて主に「ローン・投資・管理・遺産構造」の4つの法的支援を行っています。ローンに関しては、個人に対して保証人が必要な場合の法的助言、ビジネス・オーナー及びビジネス・パートナーには商取引における交渉や法的アドバイスなどを提供しています。

 また、投資に関しては保険やスーパーアニュエーション、税金などの法的助言に加え、投資の失敗・債務契約、個人民事再生、自己破産、破産管財人との取引などについてサポートします。更に個人向けに婚前契約、和解契約、委任状、遺言・遺産相続手続きや、ポートフォリオに適した資産保護などにも対応し、労務、ポートフォリオに適した合弁事業、パートナーシップ、信託あるいは法人事業の法的助言、M&A、資産保護など幅広く取り扱っています。日本人クライアントの場合、不動産売買や離婚裁判、移民法などの相談が多いです。

 遺言・相続については、健康なうちに遺言作成及び法定代理人・後見人についての取り決めをしておくことが重要です。また、遺言信託の作成は、子どものための資産保全を強固にします。事故など、もしもの場合に備えて事前に法定代理人・後見人を任命しておくことで不必要な費用や時間、損害を避けることができます。

──COVID-19の影響で環境が変化し、お金の借り入れや投資、起業についての相談が増えたと伺いました。

 COVID-19によるパンデミックが世界に前例のない変化をもたらしたことは言うまでもなく、弁護士業界にも大きな影響を与えました。法律そのものにはあまり変化はありませんが、多くの二次的な影響を受けています。不動産市場のブームや、相続・財産管理、破産、清算などの依頼が急増しました。過去最低の低金利によって不動産価格は急騰し、それに伴い借入をする人も増えました。消費者が金融機関からお金を借り入れる際、金融機関には「責任ある貸付」の原則など多くの法規制が適用されます。当事務所は、金融業者が規制を順守しなかったために損失を被ってしまった消費者を支援します。また、個人が会社や自己管理型のスーパーアニュエーション・ファンドを通じてお金を借り入れる場合は、通常「保証と補償の証書」という書類に署名する必要があります。その書類に署名するためには法律の専門家によるアドバイスが必要となり、そういったサービスも行っています。

 パンデミックをチャンスだと捉えている起業家には、法的観点から最適な事業構造、資産保全、契約交渉等のアドバイスを提供します。法律は、企業側が内容を理解していることを前提として個人消費者を保護する傾向が強い仕組みによりできています。そのため、企業は法を遵守することはもちろん、「知らなかった」で思わぬ損失を被ることがないよう、法律のプロに相談することが大切です。

──これまでに携わった金銭問題のサポート事例についてお聞かせください。

 当事務所は、オーストラリア金融苦情対応局(AFCA)に苦情を申し立てることで、個人の補償請求や、不正を行う金融業者への債務免除を支援しています。具体例として、銀行の共同保有口座において、共同保有者が他の保有者の許可なく勝手に資金を引き出すことを銀行が許可してしまった案件があります。その際、AFCAを通じて苦情を申し立て、結果的に引き出された資金の払い戻し、非経済的損失の補償及び法定費用の支払いを受けることに成功しました。

 私自身が法務を執り行う中で心掛けていることは、日本と豪州の法律の違いや考え方の違いに戸惑う気持ちを理解し、豪州での考え方や解決法をクライアントに分かりやすく説明することです。クライアントの気持ちに深く配慮すること及び、第三者の目線で客観的かつ的確なアドバイスを提供することの両立を目指しています。

<事業内容>

会社法(株主総会・取締役会・社内規定)から債権回収、商事契約、登記・届け出・登録など諸手続き・不動産、労働法、家事事件(離婚・相続)、訴訟、紛争解決、遺言・遺産相続、移民法まで個人・企業に関わる法律業務全般を取り扱う。

CJM Lawyers

H&H Lawyers

■住所:Level 9, 50 Cavill Ave., Surfers Paradise QLD
■Tel: 1300-245-299(代表)、0456-487-241(日本語対応可能)
■Tweed Heads(NSW州)とChinderah(NSW州)に支店あり。
■Web: www.cjmlaw.com.au

必見!マネー特集2021/【PR】弁護士法人・伏見総合法律事務所

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弁護士法人・伏見総合法律事務所
Fushimi Law Offices
髙橋健氏

 日本に拠点を置きながら、豪州の専門家らと連携し豪州法務にも積極的に取り組む弁護士法人・伏見総合法律事務所。同所の事業内容や強みに加え、遺言・相続問題など日豪両国間で発生する金銭問題において、どのような法務サポートを行うのか、またサービスを提供する上で心掛けている点について同所の髙橋健氏に伺った。

PROFILE

髙橋健

髙橋健(京都弁護士会所属)
2008年立命館大学法科大学院卒、同年に司法試験合格。09年司法研修所を修了し、弁護士登録。13年伏見総合法律事務所に移籍。18年ニュー・サウス・ウェールズ大学Institute of Languages English for Lawコース修了。主に中小企業の法務面をサポート。18年から母校である立命館大学法科大学院で「企業法務」の授業も担当している。

ここがポイント

  • 日豪両国間で発生する金銭問題を含む案件において、日本サイドの法務面をサポート
  • 日本法の知識と経験を最新情報及び実務運用を踏まえ、個別に具体的なアドバイス
  • 豪州の提携弁護士と共同で案件を取り扱い、依頼者との円滑なコミュニケーションを実施

──御社が提供するサービスについてお聞かせください。

 当事務所は、日豪間のお金の問題のうち「日本サイド」の法務面をサポートしています。例えば遺言相続問題に関しては、豪州に居住し日本に資産(預貯金・不動産・株式など)を有する方々に、生前の対策として「遺言作成業務」と、死後の問題として「遺産分割協議や遺言執行のサポート業務」などを、日本法に基づき対応しています。企業のビジネス法務については、以前の日豪プレスのインタビューを参照下さい。

 当事務所は日本に拠点を置き、日本の遺言・相続問題やビジネス法務の情報を日々アップデートしながら日本国内の裁判対応を含む業務に取り組んでいます。そのため、日本から離れた豪州在住の方々にも、そのような実務経験などを通じて養った、いわば生きた日本法の知識・経験を、最新の情報・実務運用を踏まえて個別・具体的にアドバイスする点が強みです。

──豪州在住の日本人から寄せられるお金に関する相談内容はどのようなものですか。

 一番多いのは遺言・相続案件です。豪州国内に居住する日本人の遺産が日本国内にある場合、日本国内の相続手続(銀行での預金払戻手続きなど)や、豪州国内の遺言書を使った日本国内での相続手続、更にまだ相続が発生していない状態で、病気などやむを得ない事情で日本に帰国して預金口座の解約払戻しなどができない際、依頼を受けて日本国内の銀行と折衝し預金などの金融資産を解約払戻しする案件に対応しました。そのような個々の案件対応の中で痛感するのは、日本国内の相続手続きにおいては、日本法に従った形式での遺言書があれば、スムーズに進みやすく非常に効果的なことです。

──これまで携わった金銭問題の案件で印象的なものはありますか。

 日本人が遺言書のない状態で豪州で亡くなり、残されたオーストラリア人の配偶者から日本国内の遺産に関する相続手続きの依頼を受けたことがあります。日本と深い関わりがなく日本語もほぼ分からない方でした。また、生前それほど交流がなかった兄弟姉妹が相続人として存在するという複雑な事案でした。配偶者が日本人ではないため、サイン証明書を取得することができず、日本の金融機関もどのような書類で代替するのか前例が乏しく方針が定まらない中、豪州の提携弁護士と協力し、「Statutory declaration」を作成するなどして相続手続きを完了させることができました。

 また、日本には豪州ではあまり馴染みがない「相続放棄」という手続きがありますが、この相続放棄は、基本的に被相続人の死亡後、自分が相続人となったことを認識してから3カ月以内に日本の裁判所で手続きを取る必要があります。その期間内に相続放棄の手続きをしなければ、原則、自動的に相続をすることになり、もし遺産が負債ばかりの場合、悲惨な結果となりかねません。豪州在住の相続人から、この相続放棄手続の依頼を受けることも多くあります。特に被相続人が亡くなってから3カ月経過後に多額の負債を知り、不安を抱えて相談を頂く場合も多いです(結論としては、このような3カ月経過後の相続放棄であっても日本の裁判所で認められる場合があります)。

 豪州在住の方々のお金にまつわる法務サポートをする中で感じることは、日豪の距離感です。特に国境の行き来がしにくいコロナ禍の昨今、なおさらかと思います。法律問題は、多額の負債を相続してしまうなど場合によっては非常に大きな影響を与えます。そのような中、日本でこういった法律問題を扱っている当職においては、日本法の確かな実務的知識・経験を提供することに加え、小さい進捗状況についても定期的に依頼者とコミュニケーションを取ることを心掛け、オンライン・ミーティングも積極的に活用して、できる限り不安感を取り除くことに努めています。

<事業内容>

伏見総合法律事務所の髙橋氏は、海外市場に事業展開するさまざまな業種の中小企業の顧問業務及び、豪州法務(日系企業のオーストラリア進出のサポート業務や、日本とオーストラリア双方に遺産が存在する場合の遺言相続サポート業務など)にも積極的に取り組んでいる。

Fushimi Law Offices

H&H Lawyers

■住所:京都府京都市伏見区風呂屋町265伏見総合ビル(京都事務所)
東京都千代田区丸の内1-1-1パレスビル5階515区(東京事務所)
■Email: k-takahashi@fushimisogo.jp
■Web: www.fushimisogo.jp / www.fushimisogo.jp/australia
豪州法務の専門サイトでは、定期的に日豪の遺言相続問題とビジネス法務に関するコラムを更新している。

必読!タックス・リターン徹底ガイド 2021

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タックス・リターン
徹底ガイド
2021

 オーストラリアの会計年度は7月1日から翌年の6月30日までとなります。7月を迎え、会計年度が変わるとタックス・リターンの申告が開始されます。本特集では、2020/21(2021年度)のタックス・リターンの内容に加え、オーストラリア国税局(ATO)の動向について解説します。
取材協力・文=甘利会計事務所/甘利知子さん(登録税理士・公認会計士)

■目次

タックス・リターンとは

 日本でいう年末調整や確定申告に当たります。日本の確定申告は、自営業や投資家のもので、給与所得の人は会社の年末調整で済むため、確定申告は馴染みのなかった人が多いと思います。日本では所得の種類によって税率が違い、保険料なども別払いですが、オーストラリアでは個人の全ての収入を一度にまとめてタックス・リターンで申告し、そこから税金は健康保険料も含めて一緒に計算されます。収入のある人はほとんどの場合タックス・リターンをしなければいけません。以下、1つでも当てはまる場合はタックス・リターンの義務が生じます(全ては挙げられないため、主なものです)。

  • オーストラリアの居住者で収入から(金額にかかわらず)源泉徴収されているものがあった
  • インストールメントという税金の前払いをしていた
  • 年間の収入が1万8,200ドルを超えた(年金受給者の場合は別額)
  • 18歳未満で、416ドル以上の不労働収入があった(親が子供名義で持っている投資)
  • 年度の途中でオーストラリアの居住者になった、または居住者でなくなった
  • 事業を行っている
  • 株・投資ファンドから収入があった

 タックス・リターンの義務がない場合は「Non Lodgement Advice」という申告不要である届けを出します。それはご自身で「MyGov」のサイトから届ける、オーストラリア国税局(ATO)のウェブサイトから用紙をダウンロードして郵便で送る、または登録税理士(タックス・エージェント)に依頼して提出することができます。

 ワーキング・ホリデー(以下、WH)・ビザで、年間収入が4万5,000ドル未満の雇用収入のみで15%の源泉徴収がされている場合は、タックス・リターンの結果プラス・マイナス0ドルなので、タックス・リターン及び申告不要届を出す義務はありません。ただし、収入が4万5,000ドルを超えている場合、源泉徴収のない収入(ビジネスなど)がある場合は、申告義務が発生します。

△目次へ戻る

タックス・リターンの仕組み

 リターンという言葉を「戻る」という意味で捉えがちですが、これは戻るという意味ではなく、「申告をする」という意味です。まず、会計年度中の課税対象となる収入(一部例外がありますがほとんどの収入)を全て合計します。そこから計上できる経費を差し引いたものが課税所得になります。

総収入経費課税所得(Taxable Income)

 課税所得から割り出した税額が、既に源泉徴収などで納めてある税金の額より少なければ差額を戻してもらうことになります。一方、既に払っている金額よりも割り出した税額が多くなると請求書がきて不足分を納税することになります。

課税所得から割り出した税金源泉徴収された税金差額戻り(Refund)

課税所得から割り出した税金源泉徴収された税金差額支払い

●収入と経費

<総収入>
  • 雇用収入、個人・パートナーシップ事業収入
  • 雇用先からの社株など特典を受けた場合
  • 銀行口座に付いた利子、株の配当、投資収入、海外収入(※1)など
  • 不動産や株を売った時に出るキャピタルゲイン・ロス(キャピタルゲイン・ロスの計算には独特のルールがあるため要注意)
  • 為替差益・損(ケースによる)

(※1)海外収入は、永住者・市民の場合、世界全ての収入を申告する必要がありますので、日本で受け取っている年金の計上や、海外のキャピタルゲインの計上を忘れないようにしてください。一方、一時滞在ビザの場合は、オーストラリアとつながりのある就労による収入のみの申告となります。

 現在、オンライン化によりATOは納税者の収入をかなり把握しています。雇用収入は雇用主によるSTPの届けがほぼオンタイムの情報を持ち、雇用主からのスーパーの支払い状況、ABN収入も業界により届けが出され、銀行利息、株の配当、キャピタルゲインにかかわる取引記録、海外からの送金記録、「EBay」や「AirBNB」などのシェア・エコノミーの情報など、情報把握範囲は日々広がっています。

 タックスリターンに必要な収入の情報は、ほとんどATOが把握している一方、抜けもあり、ATOのデータのみを頼りに申告を進めた結果、申告漏れとなり、後日ATOより指摘される場合もあります。申告漏れが出やすいのは、銀行利息、株の配当、キャピタルゲイン、海外収入などです。

<経費>

 収入を得るための必要経費は仕事に必要かつ実際に出費した(雇用主から精算されていない)こと、レシートなどの証明が要ります。一般必要経費の合計額が300ドルを超える場合、またはそれ以外の経費については全てのレシートをとっておく必要があります。データとして保存可。レシートの入手が困難なものに関しては、ダイアリー記帳でも認められる場合があります。それらは申告時に提出する必要はありませんが、後日監査が入った時に証拠として出すことになります。また、1年以上使用でき、値段が単品で300ドルを超えるもの(道具類・コンピュータなど)は、一度で経費として落とさずに、何年かにわたり減価償却させることになります。

 必要経費とは、現在得ている収入を維持するため、技術を向上させて収入を上げるための出費で、仕事を得るためのものは認められません。つまり、新しい仕事を得るための面接の費用は不可。教育費では、将来の仕事のためのもの、ビザを取るためのものは不可です。また、現在同じ系列の仕事でも、レベルのはっきり分かれている職種では、ステップ・アップの資格を得るための勉強も認められていません(例えば、現アシスタントナースからレジスターナースになる勉強の費用)。

【計上可能な必要経費の例】
  • 仕事関連の書籍、データなど
  • 文房具
  • 道具
  • ユニフォーム(シェフなどの特殊な物、会社指定のロゴ入りの物など)
  • ユニフォームの洗濯代(自宅で洗濯の場合は、単独洗いが1回1ドル、私服と一緒に洗うと0.5ドル、最高150ドルまで証拠がなくても計上可、しかし計算の根拠は必要
  • ユニフォームのドライ・クリーニング代
  • 安全靴
  • 携帯電話やインターネット代など(仕事だけではなく私用に使う場合、使用割合を計算して計上)
  • 仕事で使う車の経費
  • 仕事で必要だった交通費
  • 現在の仕事に係る教育費用
【その他、経費扱いできるもの】
  • ATOから非税認可(Deductible Gift Recipient)されている慈善団体への寄付
  • スクール・ビルディングファンドへの寄付
  • 税金申告や相談のための税理士費用、その際の交通費
【経費として認められないもの】
  • スーツなど普通の仕事着、色指定などはあっても一般的に着れる服
  • 仕事用でも特殊性のない一般の靴
  • 通勤費
  • 接待費

●手当て(Allowance)と精算(Reimburse)の違い

 雇用主から車の手当てや、費用の精算をしてもらう場合があります。精算は、発生した実費を戻してもらうもの、手当ては一定額を費用の足しにもらう場合が多いと思われます。

 手当は通常「Car allowance」「Travel allowance」など、給与にプラスで課税所得として追加されているので、経費として実費を計上することができます。一方、精算してもらったものは雇用主が経費として計上し、個人の収入には入れていないので、被雇用者は経費計上はできません。

●被雇用者のコロナ禍の自宅勤務にかかわる経費(今回の20/21年申告は丸1年対象)

 Covid-19による自宅勤務にかかわる経費として、光熱費、通信費、印刷代、文房具、オフィス機器、オフィス家具などが挙げられますが、それについて経費計上するには、3通りあります。

  • 実費申請

    光熱費や通信費については実際に発生した仕事分を計算して計上しますが、どういう根拠で仕事分とプライベート分を分けたのかの証明が必要となります。

  • Covid-19簡素化計算

    自宅で働いた時間数を合計し、1時間80セントで計算。この計算式には、光熱費、通信費、オフィス機器やオフィス家具の減価償却費が含まれ、機器類などの大きな出費がない場合に向きます。

  • 従来式時間計上

    自宅で働いた時間数に、1時間52セントで計算。この計算式に含まれるのは、光熱費とオフィス家具の減価償却費なので、通信費や機器類を別計上したい場合に向きます。

【コロナ禍の自宅勤務で計上できないもの】
  • 自宅のレント・維持費
  • 飲食費(昼食、飲み物、お菓子など)
  • 子どもの保育、教育費
  • 雇用主より精算されたもの
  • 昼食時間など、仕事以外の時間数

    勤務時間は、タイムシート、ロスター、日誌、または類似の記録として証拠を残すことが必要です。

●個人事業主・パートナーシップ(法人・トラストを除く)

 収入マイナス経費が課税所得です。ビジネスとして売り上げと経費を計上して収支を出します。スモール・ビジネスには「Small business income tax offset」という、最大1,000ドルまでの税控除があります。更にその他の収入を加えて課税所得の合計を出して、税金を計算します。

 ビジネスの場合、個人とは減価償却の扱いが違います。現在ATOの指定する中小ビジネスに該当する場合(20/21は年度途中でルールが変わっているので要注意)、資産計上して減価償却をするべきものに対して、一度に経費で落とすできるようになっています。それはコロナ禍のビジネス・サポートの一環で2023年まで続く予定です。前年度に納税の義務があったビジネス・オーナーの場合、タックス・リターンを出した後に次年度のタックスも支払い見込み有りとみなされ、インストールメントという予定納税が始まります。予定納税の目的は源泉徴収と同じように、発生ベースで税金を納めてもらうことです。その意味で、ビジネス・オーナー以外でも、投資収入により納税している人は予定納税を求られます。

●税金の計算

 税金の計算は以下の表になります。19/20から減税措置として、低所得者控除に加え、中低所得所控除が導入されました。20/21もその続きで、中所得者中心の税金が下がり、21/22では中高所得者中心に税金が下がる見込みです。過去のレートをご存じの場合、下記の表を見て頂くと分かりますが、19%のグループと32.5%のグループの枠が今までに比べて上がっています。

総収入-経費=課税所得(A)
2021年度のタックス計算(12カ月居住者の場合)
課税所得(A) 税率 税計算
$1~$18,200 0% $0
$18,201~$45,000 19% (A-$18,200)×0.19
$45,001~$120,000 32.5% (A-$45,000)×0.325+$5,092
$12.,001~$180,000 37% (A-$120,000)×0.37+$29,467
$180,001~ 45% (A-$180,000)×0.45+$51,667

「Medicare levy」は、課税所得の2%を上記にプラス。

低所得者控除
課税所得(A) 税控除額計算
~$37,500 $700
$37,501~$45,000 $700-((A-37,500)x5%)
$45,001~~$66,667 $325-((A-45,000)x1.5%)
$66,668~ $0
低中所得者控除
課税所得(A) 税控除額計算
~$37,000 $255
$37,001~$48,000 $255+((A-37,000)x7.5%)
$48,001~$90,000 $1,080
$90,001~$126,000 $1080-((A-90,000)x3%)
$126,001~ $0

 低所得者控除と低中所得者控除は両方同時に有効です。今回これらの控除と「Medicare」保険料を考慮すると、約2万2,800ドルまではタックスがゼロの計算になります。下記のリンクがATOの税金簡易計算サイトです。本記事の発行時点では20/21のアップデートができていませんが、7月1日にはアップデートされるはずです。

Web: www.ato.gov.au/Calculators-and-tools/Host/?anchor=STC&anchor=STC#STC/questions

非居住者(WH以外)の税率
課税所得(A) 税率 税計算
$1~$120,000 32.5% (A)×32.5%
$120,001~$180,000 37% (A-$120,000)×0.37+$39,000
$180,001~ 45% (A-$180,000)×0.45+$61,200

非居住者の場合、銀行利息の税金は、一律10%で、他の税金とは分けて計算される。

WHのタックス・レート
課税所得(A) 税率税計算 税計算
$1~$45,000 15% (A)×15%
$45,001~$120,000 32.5% (A-$45,000)×0.325+$6,750
$120,001~$180,000 37% (A-$120,000)×0.37+$31,125
$180,001~ 45% (A-$180,000)×0.45+$53,325

 WHビザのみで滞在し、収入が雇用収入のみで4万5,000ドル以下(19/20は37,000ドル)、源泉徴収が15%だった場合、タックス・リターンを出すと、プラス・マイナス0ドルになるので、それに当てはまるWHのタックス・リターンの義務がなくなっています。銀行利息が少しあっても、WHとして口座を開設する時に非居住者扱いになっていれば、申告は不要です。

 WHは、基本的には非居住者ですが、年度の途中で6カ月以上のコースをとった学生ビザや、ビジネス・ビザ、永住ビザなどに変更するとビザ変更時点で居住者になります。会計年度内でビザが変わって居住・非居住のステータスが変わった場合、WH期間と居住者扱い期間で幾らずつ収入があったかによってタックスは戻ったり支払ったりになります。WHのレートが変わったのは2017年1月1日からですが、いまだに年の途中でWHから他のビザに変わった場合の申告・計算を、雇用主やATOで間違うことがあり、申請後に大きな請求書が来て、それをATOに訂正してもらうケースが後を絶ちません。WHから年度途中に居住者になった場合の計算は複雑なので、ここでは省略させて頂きます。

△目次へ戻る

タックス・リターンの準備

 以下は、ご自身のATOの「MyGov」内か、税理士がATOポータルから見られる情報です。

  • 「Income Statement」

    以前は「Payment Summary」を雇用主から受け取っていましたが、現在は雇用主から給与の支払いごとにATOにレポートが届くため、Payment Summaryの発行は特殊な場合を除いてなくなりました。しかし、ATOにレポートが届いていない場合は、雇用主からPayment Summaryをもらうべき場合もあります。

  • 銀行利息
  • 株の配当
  • 「Private Health Fund」の記録

 ご自身で用意するものは、以下が主なものです。

  • 戻りを受け取るための銀行口座の情報(BSB、Account Number、口座名義)
  • 投資ファンドからの記録
  • 不動産投資の記録
  • ビジネスの収支内訳など
  • 必要経費の証拠(レシートなど)
  • 配偶者の収入(記録として入れる必要があります)
  • パスポートとビザの証明-Medicare保険料(※2)免除の場合

    (※2)「Medicare」保険とは国民健康保険です。課税収入の2%が保険料として計算されます。テンポラリー・ビザでMedicareの資格がない場合は保険料は払う必要がないので免除してもらうことができます。そのためには所得税申告前に「Medicare Office」に免除証明書を発行してもらう必要があります。

 申告方法は以下の通りです。

  • 登録税理士(Tax Agent)に依頼する
  • myGovから自身でオンライン申告

 登録税理士に頼むと料金が発生しますが、正しいアドバイスを受けることにより戻りが多くなったり、時間の節約にもなります。また、その料金は翌年のタックス・リターンの際に経費として計上できる上、税務署との間にワンクッション置くことによって後日税務署とやり取りが必要になった場合に安心です。myGovから申告する場合、申告内容がシンプルで、税務署から直接連絡が来ても対処のできる人には良いと思われます。

●所得税申告期限

 自分で申告する場合は10月31日まで。登録税理士から申告する場合は大抵翌年の5月15日まで延長になりますが、過去の申告が滞っていると延長できません。

●申告期限を過ぎてしまったら

 申告の義務のある期間について申告できていないものはもう出せないのではなく、一刻も早く出す必要があります。そういう場合は自分で出さずに登録税理士に依頼しましょう。知らないうちに罰金が科せられていることもありますのでご注意を。

●タックス・リターンの申告をすると

 通常1~2週間で「Notice of Assessment」という結果通知が郵送されます。myGovのオンライン登録をしている人は、自分で出した場合も税理士経由で出した場合も、myGovのインボックスに通知がきます。戻りのある人は銀行に振り込まれます。支払いがある人は「Notice of Assessment」が請求書も兼ねています。

 また、登録税理士を通して申告した場合の戻りは、直接自分の口座に受け取る方法の他に、一度税理士の特別口座で受理し、そこからご自分の銀行口座に送金してもらう方法があります。オーストラリアに銀行口座がない場合など、外国送金も頼めるので便利です。その場合、代行料金も戻りから取ってもらえるので、先払いせずにすむのも魅力です。

 申告が終わって入金がされた後も、申告時に必要だった書類や、Notice of Assessmentは大切に保管しましょう。スキャン・データの保存でも大丈夫です。基本的には5年の保管となります。

●スーパーアニュエーション(スーパー)を使った節税(PR・市民の場合)

 スーパーは、個人の積立年金で税金の優遇があり、最も簡単な節税対策と言えます。スーパーは投資信託で通常銀行利息よりも投資効果は高いのですが、経済状況によって減る場合があり、一定年齢になるなど条件をクリアしないと出金できませんので、ご注意ください。

 一時滞在ビザの場合、出国してビザが失効した後、スーパーの引出しができます。その際に、WHは65%、WH以外のビザは35%のタックスが取られますので、スーパーに積立追加をしても節税の意味はありません。

【追加積立による課税収入控除】

 雇用主から通常給与の9.5%(2021年7月1日から10%)が税引き前(ビフォー・タックス)として積み立てられますが、その他に個人で追加積立をすることができます。個人がスーパーに追加積立をすると、一旦税引き後(アフター・タックス)として扱われます。その後、スーパーファンドにビフォー・タックス扱いにすることを依頼し、それについてファンドからの確認書を受け取ると、タックス・リターンの際にその金額を課税所得から減らすことができるため、税金の額が少なくなります。

 積立金は、ファンド内で15%のタックスが取られるので、実際の節税としては、自身の税率マイナス15%となります。つまり、年収8万ドルの税率は「Medicare levy」を入れて34.5%ですので、1万ドルをスーパーに入れてビフォー・タックスにすることによって、

$10,000x(34.5%-15%)=$1,950

の節税となります。ただし、積立をする人の条件などがあります。

 1年にビフォー・タックスとして積み立てられるのは、2万5,000ドル(2021年7月1日から2万7,500ドル、雇用主からの積立含む)です。スーパーの残高が50万ドル未満の場合、2万5,000ドルの枠内のビフォー・タックスとして使っていない額は、2018/19分から5年間繰り越すことが可能になっているので、予期せぬ利益があった時などにまとめて積立・税控除に使うことができ、毎年控除していくこともできます。

【収入が少ない配偶者へ積立して税控除】

 配偶者の収入が4万ドルより少ない場合、配偶者のスーパーに積立することによって、税金控除がされます。配偶者の収入が3万7,000ドル未満だと、積立金の18%が税金控除となり、控除の上限は3,000ドルの積立の18%=540ドルです。配偶者の収入3万7,000ドル~4万ドルの間はパーセンテージが少なくなります。

 本記事は一部を紹介しているだけのため、詳しくは税理士・会計士・ファイナンシャル・アドバイザーにご確認ください。

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ATOの傾向

 オーストラリアの政府はさまざまな手続をオンライン化することを積極的に進めています。ATOは時代に合わせた変化としていますが、オンライン化することによって税徴収がより多く行えるというのがATOにとって一番のプラスとなっていると言えるでしょう。

 政府の機関は横にも繋がるようになり、ATOと移民局、センターリンクなどで情報のやり取りがされています。

 子どもの扶養補助(Family tax benefit)や、チャイルド・ケアの補助を受けている場合、タックス・リターンや申告不要届が遅れると補助金が止まってしまう場合があります。ATOとセンターリンクがつながっているとはいえ、報告しているのに更に催促が来る場合もあるため、その場合はセンターリンクに直接連絡して事情を確認する必要があります。

 オンライン化によりデータの行き来が早いため、監査の入り方も早くなってきました。以前は申告を一度通してから監査をしていましたが、最近はデータ・マッチングなどで、何か合わない申告は処理をストップして証拠の提示を求められることが多くなりました。

 2020年は、コロナ禍で税金の徴収や催促を厳しくしない方針がありましたが、今年になってから元通りになっています。コロナ禍でさまざまな補助金が出た2020年でしたが、それは税金からまかなわれる資金です。政府は減税と銘打って表面上は納税者の負担を減らしているように謳(うた)っていますが、実際のところ、医療費控除がなくなったり、大学の授業料返済の最低年収を下げたりと、喜んでばかりではいられません。今後、税金の取り立てが一層厳しくなることが予想されます。

 間違った申告や遅れに対するペナルティーや、それにまつわる利息などコロナ前に積極的に取り立てが行われていましたが、コロナ禍で一時ストップしていました。いずれにしても、正しく期日中に対処するのが大切です。しかし、もしペナルティーや利息などが付けられた場合でも、免除の依頼ができますので、あきらめずに代行依頼した税理士に相談しましょう。自身で申告した場合は、ATOと直接交渉してください。

※本記事は一般的な情報提供が目的であり、アドバイスとして利用されるためのものではありません。

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甘利会計事務所(Amari Tax &Accounting)

住所:Level 10, Suite 1003, 84 Pitt St., Sydney NSW
Tel: (02) 9223-7448
Email: info@taxjp.com.au

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